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村の英雄 安吉白茶



こんにちは


茶禅草堂の浄心(岩咲ナオコ)です。


春から夏にかけて私のお茶のある暮らしは


緑茶が主流となります。


風に舞うような軽やかな風味は


温かくしても冷泡茶にしても


体の熱を優しく解いてくれます。


今年の春は江南の茶山をめぐって


まいりましたので、


旅の思い出を重ねながらいただいます。


毎年、茶禅草堂では数多くの緑茶が


届けられますが


茶旅で訪ねた茶山の中から


安吉白茶をご紹介したいと思います。


「安吉白茶」は


浙江省安吉県でつくられている緑茶です。


白茶という名前がついた緑茶。


少しややこしいですが、


製法は緑茶製法なので


六大分類では白茶ではなく


「緑茶」に属します。


白茶と名づけられいる理由は


芽吹く茶葉が白いことから由来します。


なので安吉白茶の茶山は春になると


茶山全体がボワーっと白くなるのです。



中国緑茶には、


歴代の皇帝に献上されてきたお茶が


数多く存在します。今も名高いお茶は


歴史的背景も一つの基準として


名優茶として位置づけられていることが


多いのですが


安吉白茶は、ここ30年ほどで


名優茶入りを果たしたお茶です。




安吉県はこれまでお茶は生産されて


いたものの、取り立てて品質の良い


お茶が生産される地域として認識


されていませんでした。


中国において品質の良いお茶が


生産されるかどうかで茶農家の


生活レベルも違ってきます。


龍井茶のような歴代名優茶の地域では


安定的に豊かな暮らしが望めますが


関心を集めるほどの


特徴的なお茶でなければ


生活も慎ましやかな暮らしです。


30年前の安吉地域では後者の


暮らしをする茶農家ばかりでした。


ところがある山で芽吹いたお茶が


特徴的であったことが


そのお茶が茶葉研究所の


研究員の目に留まります。


調査していくと、他の種とは異なり、


白く芽吹く突然変異種であることが


わかりました。


その特徴は、外見の白さだけでなく


茶葉に含まれるアミノ酸成分が約7%という


異例の含有率でした。


(一般の緑茶のアミノ酸は3−4%程度)


アミノ酸含有率が上がると


お茶の味は甘さが増してきます。




国の機関である茶葉研究所の働きかけにより


品種改良化(白茶1号)することとなり


白茶1号として普及が


推し進められていきました。


これによって慎ましかやな暮らしだった


安吉の村は一気に豊かになったのです。


安吉白茶第一号の母樹、マザーツリーを


見に行きました。海抜800メートルほど


だったかと思います。


奥深い山を延々と上り続けた先に


ようやく辿り着いた茶樹は


堂々とその山を守り神のような


存在で勇者のような佇まいでした。


1本の茶樹が村の暮らしを変えた


白茶1号は村の英雄と呼ばれています。


偶然にもマザーツリーの保有者にも


出会うことができ、30年のうちに


村が変わり続けていった様子も


聞かせてくれました。


一攫千金というほどではないものの


この地域に住む人々の前向きで心満たされる


暮らしに繋がったと言えるでしょう。




さて、安吉白茶は春になると必ず


白い芽を出すわけではありません。


そこには芽吹く時期の気温も


影響しています。


新芽が出る時期に15-23度の気温環境のみ


白茶が芽吹くことがわかっています。


つまり、芽吹く時期に気温が高すぎても


低すぎても白くは芽吹かないのです。


突然変異種である理由はここにあります。



そしてその時期はたったの3週間程度。


もし、白い芽を摘んだお茶でしたら


甘い余韻が続くリラックス効果の高い


お茶に仕上がっているはずです。


お茶は本来自然調和の中で


作られていますが、突然変異種の安吉白茶は


その中でも、自然環境が左右される


大変貴重なお茶だと言えるでしょう。




 
 
 

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